2016年09月06日

感動ものポルノから読み取れるメディアのワナ

感動ポルノがもたらした問題提起の本質はなんなのか。
ネットや新聞に取り上げられている障害者を扱った感動ポルノの記事。気になって気になって思わず書きました。

感動ポルノとは、発案者のステラさんの言葉を使うと「ある特定のグループに属する人々を、ほかのグループの人々の利益のためにモノ扱いしている」つまり「障害者を非障害者の利益のために消費の対象としている」写真や動画をのこと。

ここで言う利益とは、人を感動させ、勇気づけ、やる気を引き出すことです。だから感動ものポルノ。(けっしてエロい意味ではない)

その背景に『「自分の人生はうまく行っていないけれど、もっとひどい人だっているんだ」と思わせ「あんな大変な人もいるんだ」』という考えがあるといわれています。

24時間テレビの裏でNHKの「バリバラ」という番組が「検証!『障害者×感動』の方程式」と題して障害者を感動の消耗品とすることに異を唱えたのが最近の話題の発端。
番組後、「よくいった」「障害者は消耗品ではない!」の反響は大きいみたいです。

途中まで共感しますが、いまいち腑の深いところに落ちない、消化不良のところがあります。

そういった一般的な感動ポルノのストーリーはだいたいこんな感じでしょうか。


難病で足が不自由になったが、前向きに努力して、がんばって、乗り越えて、夢だった〇〇山の頭頂をやりきりました!◯光さん涙!(`;ω;´)ブワッ・・・みたいなヤツ。

噛み砕くと、、、

①苦境な状況(障害)があり、
②信念や前向きな意志をもって
③一生懸命努力をし、
④何かを達成する。

あれ?まてよ。。。このストーリーの構造ってどこかで見たことがあるような。
あれです。

どんどん♪ どんどんどん♪〜♪ 風の中のスバル〜♪

そう「プロジェクトX」!!

「障害者」を「労働者」にしたらこの構図がすっぽり入る気がしてきました。
主人公達は苦境にあるミッションを達成するため挑戦する。様々な困難が彼ら、彼女らを襲う。それを必死に克服する過程が描かれ最後はプロジェクトを達成する!
副題は「挑戦者たち」。偶然の一致でしょうが、障害者を英語圏の一部では「チャレンジド」とかいったりします。(僕はそんな言い方斜め上から目線できらいですけど)

それに続くプロ●ェッショナルとか、●熱大陸とかもその範疇の番組でしょう。。。。
ちゃんと最後に人を感動させ、勇気づけ、やる気を引き出させるようなこと言ってくれます。

見たことある方は分かる通り、これらの番組はドキュメンタリーといいつつ、かなりフレームにハマったものになっています。

主人公は苦境な状況から挑戦し、努力をし、周りの反発や困難を乗り越え、達成する(した)!
おおおおぉ感動!(周りへの感謝と、賞賛のおまけ付きと言うオプションもある)

違うところは、前者(障害者)はこれから困難に立ち向かい乗り越えるまさに今を題材にしますが、後者はすでにマイナスの逆境を乗り越えて社会的な成功を収めていることが多いということでしょうか。(ちなみに成功していなければ当然取材すらされない。)

障害者という今の苦境からスタートして達成を狙うか、目的達成した人の苦境の過去から語るか・・・
スタートとゴールの差こそあれ、主人公が苦境から挑戦し、努力し、達成する姿から感動を狙う構図は、やっぱり感動ポルノと同じ。
番組の制作背景では、感動という目的に向かって、被写体の仕事や生活を取材し、不必要な部分を切り落とし、使えるところをストーリーとして再構成する。

この「目的の為に不必要な部分を切り落としてストーリー化する構造」が、感動ポルノの問題の本質ではないかと、私は思います。

それについて、あまり言及されていない事が腑に落ちていない正体でした。
この「目的の為に不必要な部分を切り落としてストーリー化する構造」の3つの効果はこんな感じです。

1都合わるいところは見れない、見せない
都合の悪いところはカットカットカット。人間の生活は多様なんですけど、「サボりたーい」「めんどくさーい」「エローい」ことは感動ストーリーに合わないから切ります。のんびりだらだら?そこはカットね。不謹慎なボヤキも。主旨から外れるもん。おかげさまで人間的くささがないスーパーな人を見ることができます。

2自己努力と自己責任
障害者が山を登りたいといった時に、訓練をして、汗を流して、達成するから良いのであって、おそらく障害者が金持ちでヘリコプターを使ってオラついて頂上へ移動した番組を作っても多くの人が不満をもつでしょう。番組(と視聴者)が求めているのは自己努力であります。楽をしてはいけません。楽は最低限に抑えて努力してください。偶然?たまたま?成り行きで?いいえそれは努力したことにしましょう。そうすれば感動します。障害がある自分の不遇を自己努力で乗り越えてください。これを言い換えれば障害の自己責任ですね。

3ストーリー主義がもたらす客体化
求められるのは感動。起承転結から外れるものはいりません。だって、物語になりませんから。達成の感動がへります。だからこちらの考えた物語に合わせてください。大丈夫です。私達の言うとおりにしていただければ感動のストーリができます。ヒーロー、ヒロインです。被写体は主体としての主人公ではなく、感動の客体です。

この効果がもたらすものは「自己努力して、目向きに目指しす人物像」と「自己責任」、「多様性が排除される不寛容な社会」ではないでしょうか。
感動を目的としたストーリーの構図は、あたかも人生の成功や生き方が一つしかないような見せ方で私達の価値観を塗りつぶしてくれます。

そこから離れる人間はいい顔をされません。変人とかニートとよばれたりするかもしれません。貧乏は自己責任。

「努力して、目的を達成して何が悪い?」。「成功した人をモデルにして悪いの?」

はい、全然悪くありません。

声を小にしてでも叫びたいのは「人間ってのは、そんな人ばかりじゃないし、そんな時ばかりじゃない。もっと色んな人生の楽しみ方したっていいじゃない」「暗に生き方を押し付けるなよ」「それ以外の生き方も大切だよ」ということです。

テレビ・メディアという作り手だけの思惑だけではないと思っています。番組を見る視聴者、受け手側もそれを求めている部分もあるでしょう。

特に障害者をメディアが扱うときに感動ポルノにせざるを得ない背景もあるのではと思ってしまいます。

障害者のマイナスな面をメディアに流そうものならやれ人権侵害だ、やれ差別だ偏見だと批判されるでしょう。また逆に充実した暮らしぶりを映せば別の視聴者から「俺達より贅沢だ」「甘えている」「税金を使いやがって」と言われるかもしれない。
そうなると、障害者を取り扱った番組は、「不幸だけど一生懸命努力して頑張っています」ぐらいしかないのかもしれません。(あ、あとサヴァン症候群みたいな天才的な能力を持った人や、それを使って犯人捕まえたりするやつですかね)

チャリティ番組は嫌いでも、プロフェッショナルは好きな人、多かったりしませんか。(そもそも24時間テレビだって視聴率は20%を超えているってことは結構な人が支持しているってことでしょう。)
視聴者も製作者も「主人公は苦境な状況から挑戦し、努力をし、周りの反発を乗り越え、達成する!おおおおぉ感動!」を欲している。そのためならあえて苦難をつくりますよ。100キロ走りますよ。

構図は一緒です。

構図が一緒ならば目的が「感動」から「笑い」に代わっても、主人公が「障害者」でも「労働者」でも「専門職」でも一緒だと思います。(番組を批判しているわえではありません。)

今回の感動ポルノがもたらした話題のメッセージは「障害者を感動の消耗品にするなよ」ではなく、(ややぶっとびますが)「多様性の排除している方法に気がつけよ。おい」ではないでしょうか。感動ポルノをもとめる価値観を持った人は沢山あるおり、それから外れるものは批判される。それに対する問題提起。

そして、もし今回の感動ポルノの話題を障害者だけに限っているのであれば、それこそ、本質が見えず、感動ポルノの餌食になっているんじゃないのか。そんなふうに思ったので、思わず書いてしまいました。

以上、私のSF物語でした。

もし私にテレビ出演のオファーが来たらもちろん出ます。



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Posted by 峰政 裕一郎 at 21:00│Comments(0)おもったこと
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