2017年09月22日

精神保健福祉士は地域で社会資源に成り得ているのか?

今回の記事は長いです。
昨日の記事で、15日,16日が精神保健福祉士の全国大会だったことをお伝えしました。
16日は学術集会ということで、実践報告や研究報告が行われました。
私も日頃おもうことがあったので、エントリーしてみました。

そもそも精神保健福祉士は、精神科に通院していたり、メンタルヘルスの悩みを持っていたり、精神科に入院している方々へ、相談や調整をして生活のしづらさを解決することを支援するのがお仕事です。
また、地域社会との連携や、メンタルヘルスの分野を中心に住みやすいまちづくりも行ったりもします。
国家資格で、保健所や県庁、病院、診療所、障害者の福祉事業所、一般企業・・・といったところに実はこっそりですが堂々といます。
ひきこもりや自殺、発達障害といったことも関連分野であり、問題解決にむけて取り組んでいます。

そんな人たちです。
同業者間でよく言われるのが、「精神障害者が地域で当たり前に生活することを支援する」「精神保健福祉士は地域で実践するんや」ということです。
日本の精神科医療は、病院収納主義で、退院できるにも関わらず何年、それこそ今でも長い人は40年や50年(想像すると寒気がします。20歳で入院したら70歳。そういった人生。)
、病気が落ち着いた状態でも、帰るところがなく入院を強いられるという世界的な黒歴史があります。それを解消するのも精神保健福祉士の役割。日本のこれまでの取組みの反省として「地域」というワードが重要視され、頻繁に飛び交います。

前置きが長くなりましたが、今回の私の発表は、「地域、地域っていいますけど本当に地域で活動できているんですか?」という疑問を持ったことから始まりました。
これを読んでくださっている方が、精神保健福祉士と聞いて、「???なにそれ??」となることが、地域で実践できていない証左だと思います。
医師ときいて???となる人は少ないです。それだけ、医師は地域社会に根づいているといえるでしょう。

なので、まずは精神保健福祉士が地域で見える化されることが必要であり、そうするためにはどうすれば?ということを自分なりの実践をまとめました。


以下、その発表にむけた抄録を転載しておきます。

【抄録原稿】
I 取り組みの背景
精神保健福祉士(以下 PSW)の実践は、現代社会の複雑化に伴い従来の医療・福祉分野に留まらず職域を 拡大させている。また人口減少に伴う地域の様々なリソース減少による問題が顕在化しつつある。この現状 は人間の福利の増進を目指し、人と環境に働きかけるソーシャルワーカー(以下 SWer)の役割、特に地域へ の働きかけがより重要性を増していることを示す。
しかし、多岐に渡る問題に対して PSW は SWer として取り組めているのか。高良は所属する組織と養成教育 が大きく影響し、SWer が制度から排除される人々の支援や権力構造への変革等を目的とした実践が、限定的 になっていることを指摘している1)。このことから支援を必要としている人たちに対して SWer が十分な社会 資源になっていないと考えられる。
また地域の中で社会資源化されていないということを裏返せば、実践の多くが医療や福祉の限られた枠の 中でしか行われていないということである。それは、例えば制度という枠に支援を迎合させるという、本来 ならばクライエントを中心に多様であっていいはずの実践が出来ないという弊害を生みだす。つまり、SWer がクライエントの生活の管理装置としてある意味機能しているという見方もできる。
以上より PSW が地域にとって社会資源化されることは重要であり、その実践方法の構築が必要である。

II 取り組みの目的と方法
発表者は 2011 年以降、所属機関とは別の勉強会やイベント、事業などに参加・参画する機会が増えた。結 果、所属先での実践にも役立つ経験が増えるのと同時に、地域でのつながりが広がった。これを受け、所属 先とは異なる複数の活動をもつことが、シナジー効果(相乗効果)をつくり、実践を有意義にするだけでな く地域における PSW の社会資源化にも有効ではないかと考えた。そこで本発表は、自身の活動を俎上にあげ て要素を検証し、PSW が地域の社会資源になるための実践方法構築に寄与することを目的とする。

III 取組みの結果
活動が増えてから明らかに医療・福祉の分野を越えたつながりが広がり、それが素地となり新たな活動に 波及している。たとえば「自宅で内職がしたい」というクライエントに対して、対応できる福祉事業所がな かったが、別事業で地元スーパーとつながっていたことで就労への導入ができた事例。また古民家活用の企 画でヨーガ療法士と知り合い、当事者のリハビリや対人支援職のストレスケアの活動に至った事例などがあ る。これらシナジー効果を生んだと考えられる活動を、目的、人、場、ネットワークの4つの構成要素に分 けることができた。

IV 考察
従来の連携は「問題」から始まるが、所属以外の活動はポジティブ・コア(強みや価値)や前向きな目的 から始まることが多分にある。よって問題がおきる前に地域の中でつながりをつくることができる。そのた め、多様で柔軟な支援を形成するためのリソースが増えることにより、従来の支援の枠から外れる問題やニ ーズに取り組むときでも、クライエント主体の実践に有効性を発揮する。
また、所属外にて活動するため、所属機関による制約も迴避し、4要素が分野を越えて育まれる。その過 程で様々な交流が増え、PSW が市民レベルで可視化されてくる。つまり、複数の活動をもつ方法は「所属組 織としての PSW」と「個人としての PSW」の、両面の強みを活かしたものであり、地域の中で PSW が社会資源 として認識される取り組みの一翼を担うと考えられる。
地域にとって社会資源となることは、PSW が広範囲で地域のニーズに関わることにつながり、新たな公共 財創出に関与できる可能性が高まる。ともするとシナジー効果を生む活動はソーシャルアクションの端緒に なりうることを示唆している。

1)高良麻子:日本におけるソーシャルアクションの実践モデル「制度からの排除」への対処.中央法規,2017, p74-76.



同じカテゴリー(感想)の記事画像
長崎からの刺客。めっちゃお腹いっぱい。ちゃんぽーん。
伊丹空港は飛行機好きにはたまらん気がする
はじめてのおつかいの林明子原画展にいってきたよ
職場の愛を感じる・・・
ガーデンパークにポケモンがいた!?と言ったら違うものだとご指摘された。
一年で一番大きい満月。12月4日はスーパームーン。来年は1月・・・
同じカテゴリー(感想)の記事
 スライド「クラウドファンディングの活用から視えた『地域へ働きかける実践』の可能性 」 (2018-09-25 21:00)
 長崎からの刺客。めっちゃお腹いっぱい。ちゃんぽーん。 (2017-12-15 22:23)
 十日えびすは和歌山に来て知りました (2017-12-13 20:00)
 伊丹空港は飛行機好きにはたまらん気がする (2017-12-12 20:00)
 はじめてのおつかいの林明子原画展にいってきたよ (2017-12-11 20:00)
 回転寿司の回転って止まることがあるのね。 (2017-12-09 23:17)

Posted by 峰政 裕一郎 at 20:00│Comments(2)感想おもったこと
この記事へのコメント
む、難しい…。強引にまとめると「PSWも所属の枠を飛び出し、地域と関わろう。そうして出来た友達の輪が地域の資源に成長する!」で( `д´)b オッケー?
Posted by 和歌山のスナフキン at 2017年09月23日 00:36
スナフキンさん
モーそんなところでバッチリ!そ~言えばよかったんですね!ありがとうございます!
Posted by 峰政 裕一郎峰政 裕一郎 at 2017年09月23日 21:24
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。